アルカリくんと酸性くん
更新日:2025年06月03日 その他コラム
【おはなし】
むかしむかし、「しぜんのくに」というふしぎなところに、にんげんの目には見えない小さな世界がありました。
そこには、いろんな性格をもった子たちがくらしていました。
そのなかでも、とくに有名だったのが、元気いっぱいのアルカリくんと、ちょっぴり気むずかしい酸性くん。
アルカリくんは、「やあ!元気かい? ぼくといっしょにピカピカになろう!」と、どんな場所でも明るくしてしまう性格。
酸性くんは、「うーん、きみのその勢い、ちょっと苦手だな……。でも、わたしだって役に立ってるんだよ」と、まじめでおちついた性格でした。
ある日、「しぜんのくに」の中のよごれの森が、ものすごくきたなくなってしまいました。
ねばねばした油や、べたべたの水アカたちが、木や川をうめつくしてしまったのです。
「大変だ! 森がこのままだと、ほかの町にもよごれが広がっちゃう!」
いち早く気づいたのは、アルカリくんでした。彼はすぐにとびだして、ピカピカ作戦を始めました。でも――
「えい! よごれをふっとばせ!」
シュワシュワ、ブクブク……!
泡をふきだして戦うアルカリくん。しかし、油には強くても、水アカにはなかなか効きません。
そこへ、すました顔で酸性くんがやってきました。
「油はきみの出番だけど、水アカはわたしのほうが得意よ」
「え? そうなの?」
「うん。水アカは石みたいにかたくて、アルカリではなかなか取れないの。わたしの力をいかして」
アルカリくんは、はじめはちょっとくやしい気持ちになりました。
でも、森を助けるには協力が大事だとわかっていました。
「じゃあ、いっしょにやってみよう!」
ふたりは力を合わせました。アルカリくんが油をあらい流し、酸性くんが水アカをとかしていきました。
するとどうでしょう!
森の木々はまたみどりにもどり、川もきらきらとひかりだしました。鳥たちも楽しそうにさえずり始めました。
そのとき、よごれの王さまがあらわれました。
「グオオオオオ! ふたりがちからをあわせるとは……そんなの、ずるいぞぉぉぉ!」
王さまは、ねばねばの雲をふきだして、ふたりをとじこめようとしました。
「いまだ!」
アルカリくんが勢いよく突進し、王さまの足元をすべらせました。
「つぎはわたし!」
酸性くんが泡をとばし、王さまのまわりをとけていきます。
「ぐわああああ〜〜〜!」
王さまは、ぶくぶくと小さくなって、とけてしまいました。森に、またしずけさがもどったのです。
「ありがとう、酸性くん。きみがいなかったら、ぼくひとりじゃ無理だったよ」
「こちらこそ。わたしも、きみの明るさにすくわれたの」
ふたりはニコッと笑って、手をたたきあいました。
こうして、ちがう力を持つふたりは、おたがいをみとめ合い、いちばんのなかよしになったのでした。
そして今でも、どこかの家の台所やおふろ場で、ふたりはこっそりと力をあわせて、きれいにしているかもしれませんね。