重曹とキッチンのひみつ ~新たなる訪問者~
更新日:2025年07月09日 その他コラム
【おはなし】
キッチン王国が、再び平和を取り戻してから、たっぷりの時間が過ぎました。
ジョウソウ、クエン、ミント、そしてスポンジたちは、毎日きらきらと輝きをまといながら、皆のために働いていました。
ある朝、窓から一筋の光が差し込み、カウンターの上に小さなお客さんが転がり落ちてきました。
それは、ほんのり甘い香りのする、「ハチミツの雫」。名をメルといいました。
「た、たすけて……!僕、こぼれちゃって……」
メルの身体から、甘い滴がぽたぽたと落ち、辺りがべたべたとなりそうなのです。
「大丈夫だよ、メル!僕たちがいるから!」
ジョウソウが優しく声をかけ、クエンやミント、スポンジたちも力を合わせてメルを受け止めました。
でも、メルが落ちたところから、甘い香りにつられて小さなアリたちが集まり、行列となってキッチンを侵略しそうになります。
「僕のせいで、キッチンが大変だ……」
メルがしょんぼり呟きます。
そのとき、クエンが凛とした声をあげました。
「メル、君がいてくれるから、キッチンは美味しくなるのよ。僕たちは、そんな君を助けたい!」
ジョウソウも笑顔でうなずき、身を投げ出して床をさらさらと粉でおおいました。
アリたちは、さらさらの粉で進めず、後退していきました。
次に、ミントが爽やかな風を吹き、クエンがその酸を使って、キッチン中をきれいにしていきます。
スポンジたちは、メルのこぼした甘い滴をやわらかく受け止め、キュッキュッとなでながら、元通りの輝きを蘇らせました。
「ありがとう、みんな……僕、ここにいてもいいのかな?」
メルの問いに、キッチンの仲間たちは声をそろえました。
「もちろんだよ!僕たちは、違う力をもつからこそ、互いを助け合えるのさ!」
それから、キッチン王国では、「メルの甘い幸せの日」ができました。
ジョウソウ、クエン、ミント、スポンジ、そしてメル。
それぞれが役割をもつことで、キッチンはもっと豊かで、温かい場所となったのです。
その夜、キッチンの片すみに、優しく笑う声が響きました。
「僕たち、たとえ違う力をもっていても、力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるよね!」
それからも、キッチン王国は、たくさんの笑顔と、きらきらした輝きであふれ続けたのです。